★改めて解説:『ザ・フラッシュ』のあのスーパーマンは?
今回は『ザ・フラッシュ』の最後に登場した、あのロン毛のスーパーマンについて解説します。
あのスーパーマンの意味は?
『ザ・フラッシュ』のクライマックスにおいて、フラッシュことバリーが(正確に言うと“もう一人のバリー”が)タイムラインをリセットしすぎたことで、マルチバース間のバランスが崩れ各バースが衝突し始めるという大惨事が起きようとします。
このシーンで各バース毎のスーパーマンやバットマンがちらっと映ります。
そしてDCは過去のTVドラマや映画で描かれた世界はすべてマルチバースの1つとしているので、50年代のTVドラマ版スーパーマン、60年代のTVドラマ版バットマン、そして70年代から80年代にかけて作られた映画版スーパーマン、スーパーガールが各バースの象徴として登場するのです。
しかしその中で、闇につつまれた荒れ地で、巨大な蜘蛛の怪獣と戦うスーパーマンが登場しますよね。ロン毛でしかもよーく見るとニコラス・ケイジ!
そう別のバースには、ニコラス・ケイジ演じるロン毛のスーパーマンがいる、ということがわかります。しかし、ニコラス・ケイジ出演のスーパーマン映画なんて観たことないですよね?
実はニコラス・ケイジ出演で『スーパーマン リヴズ』という作品が検討されたことがあります。結局この映画はポシャったのですが、本企画を楽しみにしていたファンも多かった。そこで『ザ・フラッシュ』においてファンを喜ばせるために、こういう形で“実現”させたのでしょう。
続きの目次
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すべて“スーパーマンの死”から始まった
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ティム・バートン監督×ニコラス・ケイジ出演で映画化となるが・・
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25年ぶりに陽の目をみた『スーパーマン・リヴズ』
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新スーパーマンに期待!
すべて“スーパーマンの死”から始まった
『スーパーマン リヴズ』は英語表記はSUPERMAN LIVES。LIVES = 生きている、ということですよね。これは一体どういう作品なのか?
1992年にコミック“デス・オブ・スーパーマン(DEATH OF SUPERMAN/スーパーマンの死)”が出版され話題を呼びます。日本ではモンキー・パンチ先生の翻訳で『スーパーマンの最期』というタイトルで出版されています。スーパーマンがドゥームズデイという宇宙の魔人に敗れ去る=命をおとすというお話です。このドゥームズデイは少し設定を変えて映画『バットマンvsスーパーマン:ジャスティスの誕生』に登場します。
これを基にワーナー/DCはスーパーマンの映画をもう一度作ろうとします。
ワーナー/DCは1978年(日本公開79年)にクリストファー・リーヴ出演の『スーパーマン』をヒットさせスーパーマン映画をシリーズ化するのですが、興行力に陰りが見えて一回この映画シリーズを手放す。
そして1989年にマイケル・キートン主演 × ティム・バートン監督の『バットマン』がヒットしバットマン映画をシリーズ化させます。しかしワーナー/DCは今一度スーパーマンの復活を考えていました。そう画策していた時に、“デス・オブ・スーパーマン”のコミックがヒットしたので、このコミックの映画化を考えます。
新たにスーパーマンの映画化権を手に入れ、こうして生まれた映画企画が“スーパーマン・リボーン(“SUPERMAN REBORN/スーパーマンは生まれ変わる)”です。
最初の脚本ではコミック同様ドゥームズデイによってスーパーマンは死にますが、最後にスーパーマンとロイスとの息子の形でリボーン(生まれ変わる)というものでした。
しかしこの企画だとちょっと地味だし、おもちゃが売れない。そう考えたワーナー/DCは脚本をリライトし、そうして新たに生まれた企画が“スーパーマン リヴズ”だったわけです。
この作品ではメイン・ヴィランは人間コンピューターとでもいうべきブレイニアックであり、クライマックスは巨大なロボット蜘蛛との戦いでした。
日本で発売された『スーパーマンの最期』 すぴ豊 所有
ティム・バートン監督×ニコラス・ケイジ出演で映画化となるが・・
その後も紆余曲折ありましたが、最終的にティム・バートンが監督することになりました。そして出演はニコラス・ケイジ!
ニコラス・ケイジはアメコミ・ファン。芸名のケイジはマーベルのヒーロー、ルーク・ケイジからとったとされ、息子にカル・エル(カル・エルはスーパーマンの本名)とつけました。スーパーマン初登場のアクション・コミック誌1号やバットマンがデビューしたディテクティブ・コミック誌38号も持っていました(後にオークションに出して億単位のお金を手にしたと言われています)
映画は1998年公開とアナウンスされました。スーパーマンのコミック・デビューが1938年だから生誕60周年記念超大作というわけですね。
当時のアメコミ情報雑誌等にはこの映画の製作のことが大きくとりあげられ、僕も日刊スポーツかなんかの芸能面で大きく報じられているのを見たことがあります。
しかし、製作費の問題等あって、結局この企画はキャンセルになってしまいます。
ニコラス・ケイジがスーパーマンのスーツを着たテスト写真とかも残っていて、本当に撮影寸前で中止になったことがわかります。だからアメコミ好きの間では、幻の企画として語り継がれる有名な作品となりました。
後にこの顛末をおった「デス・オブ・“スーパーマン・リブズ”(映画『スーパーマン・リブズ』の死」というドキュメンタリーまで作られたのです。
https://www.youtube.com/watch?v=kJTjkAGLJVY
25年ぶりに陽の目をみた『スーパーマン・リヴズ』
というわけで当初の公開予定年から25年たち、『ザ・フラッシュ』でファンの幻が実現されたわけです。このシーンはCG等ではなく実際にニコラス・ケイジを呼んで撮影したそうです。このシーン、闇に包まれていますがこれはヴィランであるブレイニアックが、スーパーマンのパワーの源である太陽光を遮っているからなんですね。
僕は2015年に六本木ヒルズで開催された「ティム・バートンの世界」展を見学した際、バートンが手掛けた『スーパーマン・リブズ』関係のコンセプト・アート等をみて、やっぱり本作を作って欲しかったと思いました。
ティム・バートン×ニコラス・ケイジですから、きっと一筋縄ではいかない、カルト映画になっていたかもしれませんが(笑)
なので『ザ・フラッシュ』で『スーパーマン・リブズ』版を観ることが出来た時、試写室でわお!と声をあげてしまいました。同じような方が数人いらしたのでファンにとってはたまらないサービスでしたね。
『ティム・バートンの世界』展にて飾られていたブレイニアック すぴ豊撮影
新スーパーマンに期待!
ところでいきなり話題を変えますが、いま絶賛公開中のサイコスリラー『Pearlパール』
個人的に今年のベストに入る傑作です。この映画で主人公が心を寄せる映画館の映写技師をデヴィッド・コレンスウェットという俳優が演じています。彼は2025年7月11日公開予定のジェームズ・ガン監督による新スーパーマン映画『スーパーマン:レガシー』のクラーク・ケント/スーパーマン役です。
ガン監督は若き日のスーパーマンを描くといっていますが、たしかにそのビジョンにピッタリ!この俳優さんの凛々しさ、やさしさは確かにクリストファー・リーヴ版や『ヤング・スーパーマン』路線のスーパーマンが好きな人にとってはピッタリ!彼が演じるスーパーマンに期待できそうです!!
(↓予告編ですが、ホラーが苦手な方は閲覧注意です)
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